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Merchant of Record(マーチャント・オブ・レコード)とは?概要と押さえるべきポイント
Merchant of Record(MoR)を活用すると、複雑なグローバルコンプライアンスの対応の簡素化と、運用コスト削減、効率的な国際決済処理が期待できます。

Merchant of Record(マーチャント・オブ・レコード、MoR)とは、サービスや商品を販売する事業者に代わり、顧客からのクレジットカードやデビットカードなどによる決済取引を処理する法人です。MoRを活用することで、国際的な税務コンプライアンスやクロスボーダー決済、各国の決済規制に伴う複雑な運用負担を自社で抱えることなく、円滑にグローバル展開を進められます。
決済に関する法的責任やコンプライアンス対応をMoRに委託することで、社内リソースを最適化し、新規市場への参入や事業成長の加速に集中できるようになります。
自社に最適な海外展開戦略を検討するうえで、この仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
この記事でわかること:
Merchant of Recordとは?
Merchant of Recordはどのように機能しますか?
Merchant of Recordの主な責任
Merchant of Recordを利用する主なメリット
Merchant of Record、決済ゲートウェイ、Seller of Recordの違い
Merchant of Recordと決済ファシリテーター(PayFac)の違い
Merchant of Recordモデルにおける主な課題
Merchant of Recordの活用事例
AdyenとMerchant of Record
Merchant of Recordとは?
Merchant of Record(マーチャント・オブ・レコード、MoR)とは、販売事業者に代わり、顧客のクレジットカードやデビットカードによる決済取引を処理する法人です。
コンプライアンス、税金の徴収、リスクについて財務上の責任を引き受け、顧客のカード利用明細にもその名称が表示されます。
MoRが決済処理に伴う複雑なバックオフィス業務を引き受けることで、販売事業者は本来の事業に集中できるようになります。
たとえば、米国サンフランシスコに拠点を置くSaaS企業がドイツの顧客にソフトウェアを販売する場合、通常はドイツで付加価値税(VAT)の登録が必要になります。また、SaaS事業者として、適切な税額を算出し、欧州の現地アクワイアラーを通じて取引を処理する必要があります。
MoRを利用する場合、ドイツの顧客はMoRから商品を購入する形をとります。MoRが現地の規制に対応するため、企業は複雑な現地法への対応や、多数の海外法人を設立する必要がなくなります。
Merchant of Recordはどのように機能しますか?
MoRの決済フローはバックグラウンドで処理されます。顧客は貴社のウェブサイト上で通常どおり購入手続きを行いますが、実際の決済処理はMoRの決済インフラを介して実行されます。この処理において、顧客がMoRの存在を意識することはありません。
取引時のMoRモデルの流れは次のとおりです:
商品の購入: 顧客がウェブサイトを訪問し、商品を選択して購入画面に進みます。
MoRが責任を担う: MoRが顧客の所在地に基づき、VATや売上税などの適切な現地税を算出。最終的な価格を提示します。
決済を処理: MoRのグローバルな決済ゲートウェイとアクワイアリングネットワークを通じて、取引が処理されます。
取引を完了: 顧客のカード利用明細に、MoR事業者の名称が表示されます(例:「MoR事業者 * 貴社名」)。
税務とコンプライアンスを記録: MoRが税金を徴収し、現地の税務当局に申告します。
売上の入金: 手数料等を控除した後、あらかじめ定めたスケジュールに従って残りの売上金を貴社口座へ入金します。
Merchant of Recordの主な責任
Merchant of Recordが担う主な責任範囲は以下のとおりです。
税務管理:顧客が所在する国や地域における売上税、付加価値税(VAT)、物品サービス税(GST)などの適正な計算・徴収・申告・納付を代行します。頻繁に変更される各国の税法や課税基準、申告期限への継続的な対応も含まれます。
決済処理およびアクワイアリング:提携するアクワイアラーを通じて、クレジットカード、デビットカード、デジタルウォレット、現地固有の決済手段などを世界規模で処理します。これにより、高い承認率の維持と現地カード手数料の最適化を実現します。
コンプライアンス準拠:クレジットカード業界のセキュリティ基準であるPCI DSSをはじめ、EU一般データ保護規則(GDPR)、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)、ならびに各国の金融・データ保護関連法規を確実に遵守します。
チャージバックおよび返金対応:顧客からの異議申し立てや返金リクエスト、不正チャージバックに対する反証手続きを管理・対応します。これにより、紛争対応に伴う事務コストおよび財務リスクを肩代わりします。
これらの業務を外部委託することで、法令違反などのリスクを抑えつつ、現地法人設立やバックオフィス運用の負荷を大幅に削減できます。
Merchant of Recordを利用する主なメリット
成長段階にある企業にとって、進出先の国・地域ごとに現地法人を設立することは、多大な時間とコストを要します。
MoRの導入により、企業は以下のようなメリットを得られます。
迅速なグローバル展開:現地法人の設立や各国の銀行口座開設を行わずに、世界中の顧客に向けて即座に販売を開始できます。
税務コンプライアンスの委託:MoRが各地域の売上税、付加価値税(VAT)、物品サービス税(GST)の算出・徴収・納付を代行するため、複雑な海外税務リスクや監査への対応負担を大幅に軽減できます。
PCI DSS準拠の負担軽減:MoRがセキュリティ認定済みのシステムで決済データを処理するため、自社で厳格なセキュリティ監査や規格準拠に対応する必要がありません。
運用・管理業務の効率化:多数の現地銀行口座との個別照合を行う代わりに、MoRからの定期的(月次等)な一括入金に経理業務を集約できます。
これらのメリットにより、絶えず変化する国際的な規制へ柔軟に対応しつつ、事業成長を阻害しない効率的かつ拡張性の高いビジネスモデルを構築できます。
Merchant of Record、決済ゲートウェイ、Seller of Recordの違い
MoR、決済ゲートウェイ、Seller of Record(SoR)の主な違いは、財務上の責任範囲および運用への関与度にあります。
それぞれの役割の違いは以下のとおりです。
決済ゲートウェイ:顧客の決済データをアクワイアラーに安全に暗号化して送信する技術基盤です。法的責任や税務管理、コンプライアンス対応は担いません。販売事業者が自らMoRとなり、加盟店契約やマーチャントアカウント、税務申告などを管理する必要があります。
Merchant of Record(MoR):決済処理を全面的に担うとともに、取引における財務・税務上の責任を負います。チャージバック対応や規制コンプライアンスの管理も代行します。
Seller of Record(SoR):MoRが決済フローや税務コンプライアンスを担うのに対し、SoRは販売時点における商品の法的所有者(販売元)となります。MoRとSoRが同一法人である場合もありますが、複雑なサプライチェーンにおいては、SoRが製造物責任や所有権移転、返品対応を担い、MoRが決済処理や税金の徴収を担当します。
これらの役割や責任範囲の違いを正確に把握することで、自社のビジネスモデルや拡張戦略に最適なサービス構成を選択できるようになります。
Merchant of Recordと決済ファシリテーター(PayFac)の違い
MoRと決済ファシリテーター(PayFac)の根本的な違いは、取引に伴う法的・財務的責任の所在にあります。MoRは税金の計算・徴収・納付や各種規制の遵守、チャージバック対応を含め、取引全体におけるすべての責任を包括的に負います。一方、PayFacは、マスターマーチャントアカウントを活用して店子がスムーズに決済を受け付けられるようにする決済技術基盤を提供するものです。この場合、税務や法的な責任自体は各加盟店が負うことになります。
Merchant of Recordモデルにおける主な課題
MoRモデルには多くのメリットがある一方、導入に際して考慮すべき課題も存在します。主な検討事項は以下のとおりです。
高い取引コスト:MoRは法的なコンプライアンスや財務リスクを包括的に追うため、一般的な決済代行サービスと比較して手数料が高額になる傾向があります。
チェックアウト体験のカスタマイズ制約:決済手続きのカスタマイズに制約が生じることがあり、コンバージョン率の最適化に影響を与える場合があります。
利用明細表記による顧客の混乱:クレジットカードの利用明細にMoRの名称が記載されるため、顧客が認知できず、予期せぬ問い合わせや意図しないチャージバックの発生につながるリスクがあります。
カスタマーサポート対応の依存:返金手続きや請求内容に関する異議申し立ての管理をMoR側に依存するため、決済トラブル解決までに時間を要する場合があります。
市場への迅速な参入に伴うメリットとこれらの課題を精査し、自社の事業展開に最適なモデルを総合的に判断することが重要です。
Merchant of Recordの活用事例
Intellitix
Intellitix社は、10年以上にわたりRFID技術を活用し、世界中の大規模イベントにおける入場管理やキャッシュレス決済の革新を牽引してきました。2024年には、Adyen for Platformsを基盤とする「ITX Payments」を導入。これにより、イベント主催者自身がMerchant of Recordとして運用できる体制を構築し、業務効率化とともに柔軟な運用とデータ活用の高度化を実現しました。
Viasat
衛星通信大手のViasat社は、グローバル展開を加速させるにあたり、決済インフラの集約・最適化を目的としてAdyenと提携しました。同社は自社でMerchant of Recordを担う運用を軸としながらも、一部の航空会社顧客が求めるマーケットプレイス型やPayFacモデルにも柔軟に対応できる仕組みを求めていました。Adyenの拡張性の高い決済プラットフォームの採用により、双方のモデルに対応可能となり、承認率も約3%向上しました。
AdyenとMerchant of Record
AdyenをMoRの基盤として活用することで、一貫した顧客体験(CX)を維持しながら、グローバルビジネスを迅速かつ円滑に拡張できます。
なお、Adyen自体は第三者MoRとして直接契約を代行する事業者ではありません。代わりに、貴社が自社でMoRを担う「内製化モデル」を効率的に構築できるよう、堅牢なグローバル決済処理インフラ、各国の現地アクワイアリングライセンス、高度な不正利用リスク管理ツールを提供しています。
自社でMoRの役割を担うことで、チェックアウト画面のブランディング、返金方針、カスタマーサポートなどの重要タッチポイントを全面的にコントロールできます。その一方で、主要市場における現地決済の最適化、AIを活用した自動不正対策、最新コンプライアンスへの準拠といったバックエンドの複雑な業務は、Adyenが強力にバックアップします。
また、法的な責任や税務対応の完全な外部委託をご希望の場合も、Adyenと連携するグローバルなMoRパートナーをスムーズにご紹介・統合可能です。貴社の成長フェーズや事業戦略に合わせた最適な決済構成をご提案します。
持続的な事業成長を支え、運用負荷を削減する最適な決済戦略については、ぜひお気軽にお問い合わせください。
本記事のまとめ
法的・財務リスクの軽減: Merchant of Record(マーチャント・オブ・レコード、MoR)は、決済処理、税務コンプライアンス、売上税の徴収・納付に伴う法的・財務的責任を包括的に負うため、自社の規制遵守リスクを大幅に低減できます。
グローバル展開の迅速化: MoRを活用することで、進出先ごとの現地法人設立や個別のアカウント開設を行う必要がなく、海外市場へ即座に参入・展開できます。
運用委託と管理領域のトレードオフ: 税務およびコンプライアンス管理を大幅に効率化できる一方で、手数料コストの増加や、決済・チェックアウト体験のカスタマイズ性における制約を考慮する必要があります。
Adyenによる内製化支援: Adyenのグローバルアクワイアリング基盤と高度なツール群を活用することで、事業者自らがMoRとして効率的に運用し、収益性の最大化と決済プロセスの高度なコントロールを実現できます。
よくある質問
決済プロセッサーは、金融機関間の取引データを技術的にルーティングする役割を担います。一方、MoRは技術的な決済処理だけでなく、税金の徴収、チャージバック、コンプライアンスを含む取引の法的責任と財務責任を全面的に負います。
