ガイドとレポート

クレジットカード不正利用対策・防止におけるA/Bテストの有効性

不正利用者をブロックする上で最も効果的な方法として、徹底的なリスク設定テストを使用。

Attila Dogan, Product Manager  ·  Adyen
31 7月, 2019
 ·  1 分
Illustration of experiments

決済不正利用に対抗するのは、皆さんが思うよりも難しいことかもしれません。 れっきとしたお客様がシームレスな決済体験をしっかりと得られるように、貴社は力を尽くします。 それでも、犯罪者たちは技術的な知識を活用することで、すばやく適応し、貴社のビジネスをターゲットにする能力を持っています。

洗礼された不正利用管理・防止システム のニーズは本物なのです。 本物の注文(購入時点では非常に疑わしく見えることもあります)を拒否せずに、不正利用保護の最適化を継続して行う際のバランスをうまくとるのは、真の難題となる可能性があります。

クレジットカード不正利用発生動向

オンラインビジネスは、支払いの試みすべてのうち、平均して2.5%を不正利用の疑いにより拒否しています。

加盟店リスク評議会(Merchant Risk Council)[1]による2019年の報告書の推定によると、オンラインビジネスは、支払いの試みすべてのうち、平均して2.5%を不正利用の疑いにより拒否しています。 この数値は何百万もの収益減に相当する可能性があります(拒否された支払いが実際は不正利用ではなかった場合)。

クレジットカード不正利用対策・防止はどうすれば良いか?

それでは、ビジネスがすばやい成長を続け、れっきとしたトランザクションをブロックしすぎることなく不正利用からお客様を守るには、一体どうしたらいいのでしょうか? 不正利用管理・防止ソリューション の進化は続くため、どの不正利用管理ソリューションにとっても、できる限りすばやい検出、分析、適応が極めて重要になります。

不正利用対策・防止におけるA/Bテストの力

ありとあらゆる企業が持つ、不正利用対策を継続的に調整・修正するニーズについては、念入りに検討する価値があります。 顧客データ検証目的で、ルールやスコアをランダムに調整し、あるモデルを別のモデルと取り替えたり、追加のサードパーティと統合したりすることは選択肢の一つですが、一般的には最も効率の良い手段ではありません。

A/Bテストは新しい概念ではないものの、ある設定に対して行う変更が、代表的な測定基準によって測定される結果に対して影響を与えるかどうかを判断する際に使われる手法として実績があります。

A / B Testing illustration

A/Bテストは、対照群と比較した際に、ある変数が結果に影響を与えるかどうか判断する際に使われる手法です。

リスクと不正利用に関する分野では、ありとあらゆる変更の影響と、これが偽陰性や偽陽性にどう作用するのかを追跡することが極めて重要です。 偽陰性は、貴社のシステムが見逃した実際の不正利用であり、これはチャージバックにつながります。 偽陽性は、不正利用であると誤って分類された、実際は本物の注文であり、正当な収益の損失につながります。

A/Bテストの目標は、上述の測定基準に対するある変更の影響を測定し、測定された影響が「本物」か、それとも単純に偶然によるものなのか(自然変異)に関して正確な判断を下すことであり、究極的には変更がすべてのトランザクションに対して展開されるべきかどうかという意思決定を導きます。

A/Bテストはマーケティングとウェブ分析において早期に採用されましたが、不正利用管理分野で利用できるデータの複雑性と深度を考えると、A/Bテストは根本的なものとして扱うべきです。 A/Bテストは、AとBという2つの異形を伴う制御実験であり、ある単一の変数のバージョン2つを、一般的には主体の変数Aに対する応答を変数Bのものと対照してテストすることで比較し、2つの変数のうちどちらがより効果的なのかを決定する手段です。

不正利用対策・防止を目的としたテスト機能の紹介

グローバルリスクの専門家によって構成されるAdyenのチームは、常に社内でこの実験フレームワークを活用することができましたが、この度、当社と提携する加盟店の皆様にもこの機能を喜んでご提供いたします。

当社の機械学習(ML)の取り組みにおける最近の進歩は、強力な実験プラットフォームを切に必要としていました。これは、ユーザーに対する関連影響をリアルタイムで監視し、表示でき、加盟店の皆様へ効果的に完全な制御権を与えてくれるプラットフォームです。

ある一連のリスク設定に対する何らかの小さな変更について、既存の設定を新しいものと単純に交換するのではなく、スプリットテストができます。 Adyenは、ML駆動型のRisk Optimizerを通じて特定の設定すべて(ある一連のリスク設定により構成される組み合わせを「プロフィール」と呼びます)を実行し、異なるもの2つがもつそれぞれの長所を取り入れるハイブリッド型ソリューションを効果的に生み出します。すなわち、ルールベースのアプローチの透明性と統制力に、機械学習の拡張可能で正確な予測が加わります。

試験に参加してくださった加盟店の皆様と当社がテストした初期バージョンでは、承認や不正利用率などの主要な測定基準に焦点を絞りましたが、コアコンポーネントになるには詳細なインサイトが必要だという点もすぐに学びました。

ユーザーは生の数値、またリアルタイムのグラフによる支持を受け、たとえばカード発行会社による正確な拒否理由の詳細を掘り下げ、適用される変更の影響を評価できるようになります。

当社は新たなリスク設定の継続的なテストを推奨したいだけでなく、不正利用管理の成功には、意見任せにするのではなく、確固としたデータに基づく意思決定が欠かせないと強く信じています。 Adyenの実験機能はこのアプローチの一環であり、加盟店の皆様が先手を打つ支援をいたします。

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実験機能の能力がわかったところで、実際のケーススタディを検討してみましょう。

OLXにおける不正利用対策成功事例

OLX Brazilは大量のトランザクションを抱えている、世界最大のマーケットプレイスの一つです。 同社は常に支払いリスクマネージメントを課題として捉えてきました。

OLXとAdyenは共に、機械学習テクノロジーとインテリジェントデータの利用に基づく戦略を策定しました。 支払い情報ベースを分析することで、当該アルゴリズムは消費者行動の理解を深め、コンバージョン、トランザクションの承認、また「最高の顧客体験」に近づく方法に関して、最適化されたインサイトを提供してくれました。

次のステップは、新しく学習した知識を用い、OLXの不正利用防止ツールで使われるリスクプロフィールを確認することでした。 このプロフィールには異なるデータ項目が複数含まれています。位置情報、Eメール、平均的なチケット、カード情報、ショッピングカートの商品、ユーザー履歴などです。 各項目にはそれぞれが表す不正利用のリスクに従い、スコアが割り当てられます。 これがプロフィール「A」となりました。

「8週間後、全ボリュームが新しいリスクプロフィールに移行され、チャージバックレベルを維持した状態で、承認率の2.6%増加が最終結果となりました。」

Ligia Pires氏OLX Brazil トラスト&セーフティマネージャー

第二の支払いリスクプロフィール「B」はその後、新たな一連のルールをまとめることで作成されました。 機械学習は、同社のセールス履歴により生成されたデータに従い、各プロフィールのスコアを修正しました。 「十分なデータ、強力なツール、新たなソリューションのテストに対して常にオープンなお客様が揃っていたので、当社はA/B形式でテストを始めました」と、OLX Brazil トラスト&セーフティマネージャーのLigia Pires氏は語ります。 「テストでは、不正利用防止プロフィールの古いものと新しいものを並行して稼働させ、どちらが最善の結果を出すかを確認します。」

テスト期間の最初の段階は4週間続き、この時点では新しい不正利用防止プロフィールに送られたのは売上高の10%だけでした。 優れた結果が示されると、ボリュームは次の2週間で25%へ増加し、最後の2週間では50%へ増加しました。

「現在、Adyenは支払い関係のイニシアチブにおいて当社をサポートしています。また当社はAdyenのテクノロジーにより、 承認済みの有効な金融トランザクションと、違法な購入をブロックする堅牢な不正利用防止システムとの両方の長所を得ることができています」と、Pires氏は結びました。

実験が貴社にもたらす効果

AdyenのRevenueProtect(不正利用検知・防止システム)には、ベータテストが完了し次第、プレミアムリスクのアドオンとして新たな実験機能が追加されます。 この機能に何ができるのかを確認するため、試験版プログラムへの参加をご希望の場合は当社までお問い合わせください

まずは、Adyenのエンドツーエンド型支払いシステムの力により、一箇所へより多くのデータを集め、実験によりテスト、学習、最適化をする統制力を得る方法をご覧ください。


参考資料:

[1]  2019 MRC Global Fraud Survey




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