Adyen Index Japan Retail 2026
AIが変える買い物のカタチ

序章: AI時代におけるコマースの今と未来
今やAIは未来のテクノロジーではなく、日々の生活に欠かせないものとなっています。「Adyen Index Japan Retail 2026」によると、日本の消費者のおよそ3人に1人が「買い物でAIアシスタントを利用したことがある」と回答しました。また、日本の小売事業者を対象にした調査では、実に96%が「業務上でAIを活用している」と回答。さらに、97%の事業者が、AIエージェントがユーザーに代わって商品の選定から決済までを自律的に完結させる次世代のEC「エージェンティックコマース」に対して、今後2年間で投資する予定があると回答しています。
一方、急速なAIの発展に対する戸惑いも広がっています。今回の調査では、消費者の62%がAIアシスタントに購入を委ねることに「抵抗がある」と回答しました。また、事業者の94%が「AI活用拡大を阻む障壁に直面している」と回答しています。AIの普及が不可逆的に進む一方で、消費者、そして事業者の間には、急速なAIの普及に対する心理的・物理的な懸念があることがうかがえます。
日本の消費者、そして小売事業者は今、どのようにAIを活用しているのか。AIの普及は実際にどこまで進んでいるのか。「Adyen Index Japan Retail 2026」の結果から、AI時代におけるコマースの現在地と、未来の姿に迫ります。
Adyen Index Japan Retail 2026 調査概要 実施主体:Adyen 調査会社:YouGov 調査期間:2026年3月24日〜30日(消費者)/3月20日〜27日(小売事業者) 調査方法:オンライン調査 消費者サンプル:18歳以上の日本人男女1,034名 小売事業者サンプル:年間売上高が100億円以上の日本の小売事業者334社。※回答者はシニアマネージャー以上の役職者。

日本の小売業は今、AIの台頭という歴史的な変革期にあります。「Adyen Index Japan Retail 2026」では、AIによる利便性への期待が高まる一方で、判断を任せることへの戸惑いやセキュリティへの懸念も浮き彫りとなっています。来るべき「エージェンティックコマース」時代において、企業の持続的成長には「信頼できる決済」が不可欠です。Adyenはグローバルな知見と決済基盤で、日本の事業者の皆様が不確実な環境下でも競争優位性を確立できるよう、変革を力強く牽引してまいります。
現状:広がるAIショッピングと事業者戦略の最前線
AIがあらゆるシーンで利用される中、商品購買におけるAI活用が消費者の間でも広がっています。
Adyenの調査では、消費者のうち37%が「買い物をする際にAIアシスタントを活用したことがある」と回答しました。少なくとも週に1度はAIを買い物に利用していると回答する消費者も16%にのぼり、AIの活用が日常的になりつつあることがわかります。年代別では、若い「Z世代」の活用(65%)が最も多く、続いて「ミレニアル世代」(45%)となっており、若い世代ほどAI活用に積極的であることがうかがえます。
買い物でAIを活用する理由
消費者が買い物にAIを活用する目的としては、主に以下の2点が浮かび上がります。
アイデアの発見:今回の調査において、消費者がAIを買い物で活用する目的として最も多かったのは「誰よりも早く、ファッションや食事などのアイデアのひらめきを与えてくれる」(67%)でした。また、AIを利用する消費者の5分の3近く(59%)が「AIを使ってユニークなブランドやショッピング体験を見つけたい」という意見に同意しています。多くの選択肢がある中、消費者はAIを活用することで、自身の要望に合った商品や、思いもよらないアイデアを入手していることがわかります。
ノイズの削減: ソーシャルメディア上に多くの情報があふれる中、自分が本当に必要としている情報を取捨選択するためにAIを使うという声も多いようです。今回の調査では、AIを活用する消費者の65%が「オンライン上の雑音を整理するのに役立つ」と回答しました。また、約7割(72%)が「ソーシャルメディアには消化しきれない情報が多すぎる」と答えており、情報が氾濫するSNS時代において、欲しい情報を精査するためにAIを活用する消費者の姿が浮かび上がります。
この消費者傾向を小売事業者目線で読み解くと、AIの検索に選ばれやすいようにする生成エンジン最適化(GEO = Generative Engine Optimization)を実施するなど、膨大な情報の中で自社のサービスや商品が埋もれない工夫が、AI時代のコマースで成功を収めるカギになると言えそうです。
加速する事業者のAIシフト
では、日本の小売事業者はAIをビジネスにどのように活用しているのでしょうか?
今回の調査では、実に96%の事業者が「AIをビジネスに活用している」と回答しました。さらに、97%の事業者は今後2年間で「エージェンティックコマース」に投資する予定があると回答しており、すでにほぼすべての事業者がAI時代のコマース戦略に向けた準備を検討・実施していることがうかがえます。
事業者のAI活用、3つの領域
具体的に、事業者がどのような用途でAIを活用しているかを分析すると、以下のような傾向が見えてきます。
業務効率化による顧客体験の向上: AIが活用されている領域として「顧客サービスおよびサポート」(44%)が最も多く挙がりました。また、「業務効率化・オペレーション改善」(35%)、「顧客体験の向上」(35%)という回答も続いています。事業者の間では、お客様の疑問に対する最初の窓口としてAIチャットサービスを用意するなど、AIと人の役割を分担し、人は顧客体験の改善に注力するという姿勢がうかがえます。
マーケティングとアイデアの発見: 消費者がAIを活用する一方で、事業者側も自社商品を発見してもらうためのアイデアをAIから得ているようです。本調査では、38%が「マーケティングおよびプロモーション」にAIを活用していると回答しました。また「商品・ブランドの発見」への活用も34%あり、市場調査や商品のアイデア出し、宣伝に至るまで、AIの活用幅が広がっていることがうかがえます。
不正防止および検知: 「不正防止および検知」にAIを活用しているという事業者の回答も31%ありました。Adyenが2026年に公開した「不正利用対策レポート」では、現在の不正手口が正当な顧客行動に紛れ込むほど巧妙化しており、機会損失や事業収益へ影響を及ぼしていることが明らかになっています。こうした現状に対し、不正の検知や誤検知(正当な取引を誤って不正と判断してしまうこと)の防止にAIを活用する動きが広がっています。
ここまで、実際のAI活用状況やその用途について詳しく見てきました。一方で、急速なAIの発展にともなう新たな課題や摩擦も生じています。
次章では、今回の調査で見えてきたAI時代の課題について分析します。
課題:AI活用に立ちはだかる心理的および物理的な壁
今回の調査では、AIが急速に普及する一方で、消費者・事業者ともに課題に直面していることが浮かび上がっています。
消費者が抱く心理的抵抗と不安
買い物でのAI活用が加速する反面、62%の消費者がAIアシスタントに購入を委ねることに「抵抗がある」と回答。「抵抗がない」と答えた22%と比べ、半数を超える消費者が買い物を任せることへの懸念を示しています。
一方で、消費者の間では「AIは日常において避けて通れないものになる」との認識も広がっているようです。およそ3割にあたる28%の消費者が「AIはセキュリティー面で不安だが避けられない」と回答しました。また、「セキュリティチェックが少なくなっても、可能な限り素早い決済を好む」と回答した日本人はわずか7%にとどまっており、AI時代のショッピングにおいて、効率化よりもセキュリティに対する意識が強いことがわかります。
事業者が直面するAI活用の壁
事業者の間でも、94%が「AI活用の拡大を阻む障壁に直面している」と回答するなど、急速な普及に伴う課題を抱えています。
顧客との接点: 最も多い43%の事業者が「顧客との直接的な関係性やブランドコントロールを失うリスク」を障壁として挙げました。AIによる効率化が進む半面、複雑な要望や感情的な寄り添いが必要な場面ではAIでカバーしきれないケースも多く、ブランドの信頼や顧客ロイヤルティ維持のためには、人間とAIの適切な役割分担やシームレスな連携が求められていることがうかがえます。
リソースの課題(スキルやコスト等): 34%の事業者が「既存システムへのAI統合の難しさ」を障壁と回答。「優先順位の競合やリソース不足」(32%)、「社内のAI専門知識やスキルの不足」(32%)、「コスト」(32%)も同様に挙がりました。AIの導入・維持には多額の費用がかかる上、専門人材の不足も深刻であり、特に中堅・中小規模の事業者にとって最新のAI技術をキャッチアップし続けるためのリソース確保が大きな負担となっています。
セキュリティ面での懸念: 消費者側が不安を抱いているのと同様に、事業者側も顧客データの取り扱いやプライバシー保護に細心の注意を払う必要があると感じているようです。31%の事業者が「データのプライバシーやセキュリティへの懸念」が障壁になっていると述べました。AIを活用した新たなサイバー攻撃やデータ漏洩のリスクに対応するため、これまで以上に堅牢なセキュリティ体制の構築が急務だと言えそうです。
このような課題に直面する中でも、AIの技術は不可逆的に進歩し続けています。AIを活用して決済パフォーマンスを上げ、事業改善へとつなげるためには、新しい技術に適応する強固なセキュリティと柔軟なシステム基盤が欠かせません。
そして、これらの課題と懸念を乗り越えた先に見えてくるのが、AIが消費者に代わって自律的に買い物を完結させる次世代のEC「エージェンティックコマース」が主役となる未来です。
未来への展望:エージェンティックコマースの台頭
AIエージェントの技術が発展するにつれ、将来は人が介在せずに商品選定から決済までのやりとりが完結する「エージェンティックコマース」が主流となる未来が予想されています。
人からAIへ:購買体験の進化
従来のEコマースでは、人がAIを活用して欲しい商品を発見しても、カートへの追加、決済情報の入力、購入ボタンのクリックといった各ステップを人が主導していました。エージェンティックコマースでは、AIエージェントがユーザーの好みや要件を把握し、人に代わって最適な商品の選定から支払いまでの一連のタスクを自動で行います。
目前に迫る次世代コマース
このような買い物のカタチは、もはや遠い未来の話ではありません。実際、今回の調査では、事業者の87%が「エージェンティックコマースを認知している」と回答。さらに、今後2年間でエージェンティックコマースに投資する予定があると回答した事業者は、実に97%にのぼりました。
事業者がエージェンティックコマースに投資する理由としては、主に以下が挙げられています。
決済リスクの管理向上とマシン速度の取引への対応(22%)
業務の自動化によるコスト削減(21%)
AIエージェントが購買に影響を与える中での、顧客との直接的な関係性の保護・維持(19%)
求められる決済基盤の刷新
特に急務とされているのが、AI特有の「圧倒的な取引スピード」への対応です。人が手作業で操作することを前提とした従来のシステムでは、AIによる一瞬の決済処理に追いつけず、エラーやセキュリティの抜け穴が生じる恐れがあります。だからこそ、AIのスピードに耐えうる安全な決済基盤へとアップデートすることが、これからの市場を勝ち抜く条件と言えます。
「AIに選ばれる」ための最適化
エージェンティックコマースが本格的に普及すると、消費者の買い物はよりシームレスな体験へと進化します。日用品の補充から複雑な要件の購買まで、AIが個人の予算や好みに合わせて自律的に手配を済ませるため、消費者は煩雑な手続きから解放されます。
とはいえ、本格的なAI普及にはセキュリティやリソースといった心理的・物理的な課題も残っています。これからの小売事業者に求められるのは、強固な決済プラットフォームを用意して消費者の不安を取り除くことです。その安全な環境をベースに、人間だけでなく「AIエージェントにも選ばれるための最適化」を進めることが成功のカギとなります。
こうした信頼性の高いAI主導の体験をいち早く確立した事業者が、これからのAIエージェント時代における小売業界を牽引していくことになるでしょう。
小売業の成長を推し進める決済
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